関節リウマチとは
関節リウマチは、本来は外敵から身を守るための免疫システムの不具合によって関節に炎症が起こり、その結果、関節に痛みや腫れが起こる病気です。発症の原因に関しては、現時点ではっきりとは特定されていませんが、遺伝的要因や喫煙、歯周病などの環境要因の関与が指摘されています。ちなみに関節リウマチは、膠原病のひとつでもあります。患者様には女性が多く、30~60代の方に発症しやすいとされていますが、男性の患者様も2割程度を占めています。
初期症状として多いのは、朝起きた際に気づく手や足の指などの関節のこわばりです。これによって動かしにくさを感じるようになりますが、起床し関節を動かしているとスムーズになっていきます。関節の炎症が強くなると関節に痛みや腫れが生じます。関節の症状は左右対称でみられたり、あちこちの関節に移動して痛んだりするという特徴がありますが、1つの関節だけのこともあります。痛みや腫れは手足の指や手首などの小さい関節に起こることが多いですが、肘、肩、膝など全身のあらゆる関節に起こります。この状態を放置すれば軟骨や骨は破壊され、関節に変形が起きてしまいます。
また関節リウマチでは、関節以外のところにも症状が現れることがあります。倦怠感、微熱、食欲不振、体重減少などがみられるほか、皮膚症状(リウマトイド結節)、眼症状(ドライアイ、強膜炎、上強膜炎)、貧血、肺障害(間質性肺炎や胸膜炎 等)などもみられることがあります。また骨粗しょう症の合併率が高く、この予防や治療も大切です。
検査と診断について
患者様の症状や診察所見に加え、血液検査や画像検査などを組み合わせて、関節リウマチかどうかを総合的に判断します。
血液検査については、リウマトイド因子・抗CCP抗体という自己抗体や、関節の炎症の程度を調べられるCRPなどの数値を確認します。また肝臓や腎臓の働きなどに異常がないかも確認します。
関節の実際の状態を確かめるための画像検査として、レントゲン検査、超音波検査(エコー)検査を行います。また、関節以外の病変を調べるため、あるいは、(診断が確定した後)治療開始前の全身状態を評価するためにCT検査などをご提案することもあります。
治療について
関節リウマチを完治させるのは現時点では難しいとされています。そのため炎症を抑え、腫れや痛みを起こさせなくすることで破壊や変形を防ぐ、いわゆる「寛解」を維持していくのが治療の目的となります。以前はこの寛解に至る患者様は少なかったのですが、早期の診断・治療や薬の進化により、約半数の患者様で寛解が達成できるようになりました。
関節リウマチ治療の基本は薬物療法です。最初はメトトレキサートなどの抗リウマチ薬と痛み止めを服用していただくことが多いです。痛み止めにはNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)を用いますが、痛みが強い場合にはステロイド薬を使用することもあります。リウマチの治療薬には副作用に注意が必要なものが多く、治療を受けていただく前には今のお体の状態をしっかりと調べておく必要があります。当院ではリウマチ専門医が治療薬を適切に判断し、その方に合ったお薬を提案いたします。
治療薬について
従来型抗リウマチ薬(csDMARDs)
第一選択薬となることが多いメトトレキサートの他に、サラゾスルファピリジン、ブシラミン、タクロリムス、イグラチモドなどがあります。メトトレキサートやタクロリムスは免疫抑制剤と言われ、サラゾスルファピリジン、ブシラミン、イグラチモドは免疫調整剤と言われています。メトトレキサートは腎臓の働きが低下している患者様には注意が必要で、その場合は他の薬剤を最初に用いることがあり、後述の生物学的製剤をお勧めすることもあります。
生物学的製剤
生物学的製剤は関節リウマチの治療に大きな変革をもたらした新しい薬剤です。これまでの薬が化学的に合成された化合物であるのに対し、生物から作られる物質を利用した薬剤です。炎症性サイトカインといわれる炎症を引き起こす物質の働きを抑えることで症状の改善や関節破壊の進行を抑制します。生物学的製剤の登場により、関節リウマチの治療戦略や治療目標は大きく変わり、多くの患者様で寛解を達成できるようになりました。高い効果がある一方、感染症などの副作用に注意が必要です。生物学的製剤は点滴や皮下注射によって投与する薬剤で、内服薬はありません。当院では主に皮下注射の薬剤を扱っております。看護師による注射のほか、患者さんご自身やご家族の方に注射いただくこともできます。高額な薬剤ですが、十分量のメトトレキサートを3ヵ月くらい使用しても活動性が高い場合は、早期に生物学的製剤の使用を検討する方がよいと考えます。
JAK阻害薬
生物学的製剤に匹敵する効果を持つ内服薬で2013年から使用できるようになった新しい薬です。炎症性サイトカインによる刺激が細胞内に伝達されるときに必要な、ヤヌスキナーゼという酵素を阻害することで、関節の炎症や破壊を抑えます。メトトレキサートなどの他の抗リウマチ薬による治療で効果が不十分な場合に使用されます。高い治療効果がありますが、生物学的製剤と同様に、感染症のリスクが大きくなります。特に帯状疱疹については生物学的製剤に比べて発現率が高い傾向があります。高額な薬剤ではありますが、注射がどうしても苦手な患者様にはメリットがある薬です。
禁煙してください
たばこは「百害あって一利なし」といわれます。肺がんなどの悪性腫瘍、脳卒中、心筋梗塞など多くの重大な病気の原因になります。たばこは関節リウマチ発症のリスクになりますが、治療中にも様々な悪影響があります。
関節リウマチ治療には感染症のリスクが常に伴いますが、タバコは肺炎のリスク上げます。また、慢性気管支炎や肺気腫など、既にダメージを受けている肺に肺炎が起こると命にかかわってしまいます。
さらに、たばこは関節リウマチの治療効果にも影響を与えます。たばこによって、せっかく頑張って受けている治療の効果が落ちてしまうのです。リウマチ患者様のなかには生物学的製剤など、高額な治療薬を使用されている方も多くいらっしゃいます。せっかく高い薬を使うのであれば、しっかり効いてもらわないと困ります。治療効果をしっかり引き出すためにも必ず禁煙してください。
感染症対策
手洗い・うがい・マスク着用は、感染症予防の基本です。栄養バランスのとれた食事、無理のない範囲での適度な運動を心がけ、できるだけ規則正しい生活を送りましょう。また、予防接種も重要です。当院ではインフルエンザワクチン、肺炎球菌ワクチン、帯状疱疹ワクチン(シングリックス)の予防接種が可能ですので、ご希望の患者様はお気軽にお問い合わせください(現在新型コロナワクチンは取り扱っておりません)。
関節リウマチ治療と妊娠
膠原病の患者様の中には、妊娠可能年齢の方も多くいらっしゃいます。妊娠前には計画的に妊娠を考えておいていただく必要があります。妊娠をいよいよ考える場合は胎児に影響を与えにくい薬を選ばなければいけません。出産後の授乳においても薬を選ぶ必要があります。
関節リウマチのデータでは、疾患活動性が高い(痛みや腫れが強い、CRPが高い)と妊娠しにくいことがわかっています。そのような患者様では、いったん妊娠の計画を延期し、リウマチの疾患活動性をコントロールすることが重要です。ただし、妊娠可能期間が限られている場合には妊娠を計画しながら、妊娠しても使える治療薬を選んで治療を行うこともできます。
「リウマチのことは気になるけど子供も授かりたい、でもどうしたらいいのか・・・」とお悩みの方は、できるだけ早くそのことを医師にお伝えください。当院では、将来の妊娠に向けて、それぞれの患者様にとってより良い治療を一緒に考えていきたいと思います。
リウマチ性多発筋痛症
リウマチ性多発筋痛症は、名前にリウマチと付いていますが、関節リウマチとは異なる病気です。関節リウマチではリウマトイド因子や抗CCP抗体といった自己抗体が陽性になることが多いですが、この病気では自己抗体は陰性です。高齢の方に発症し、頸部、肩、臀部、大腿など近位筋といわれる筋肉に対称性に痛みやこわばりを引き起こします。また、発熱や倦怠感などの全身症状を伴うこともあります。治療はステロイド薬であり、治療を始めると劇的に症状が軽快します。
- クリニック名
- 西大寺駅前 内科・リウマチクリニック
- 院長
- 廣岡靖章
- 診療内容
- 内科、リウマチ科、膠原病内科、アレルギー科
- TEL
- 0742-53-3200
- 住所
- 〒631-0824
奈良県奈良市西大寺南町5番29号
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診療時間 (受付時間) |
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14:00~18:00 (13:55~17:45) |
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